三建設備工業株式会社

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  • 技術支援・開発
  • 不動産・建築

Google Cloud による就労環境の可視化で切り開く、建設業界の DX と 働き方改革

三建設備工業株式会社

環境配慮型の空調・衛生・電気設備の設計・施工・メンテナンスを行っている独立系建築設備会社です。
人々に快適で安全なイゴコチを提供している企業であり、空気や水や電気を通し、建物に命を吹き込む役割を担っています。
また、環境負荷低減のための最新技術「ZEB」のリーディングカンパニーとして建設業界の中で先駆けて取り組んでいます。

今回のプロジェクトであるTAMAシステムの概要

TAMAシステムは、就労環境の見える化を目的とした社内の業務システムです。
三建設備は工事会社なので、三建の社員と工事の作業員、今その人たちが全国でどれくらい働いているのか見えるようにしたもので、対象はバックオフィスも含め全社員となります。
独自に開発することになった理由は、現場で就労している人って、それぞれ端末を持っている訳でもないですし、売り物だったり、共通のアプリを配ると言うのは難しかったんです。
ですので、うちの社員が共通して登録できるものが必要だった。
最初は FileMaker で作ろうとしたのですが、やり始めてみると自由性が必要で、いろんなデバイスからもやりたいという話が出てきて、クラウドでやるしかないかなと。
作り直しをしながら今のシステムにたどり着きました。

開発を進める中で要件が変わっていった

最初は全社員を対象とするつもりはなくて、安全面の観点から工事現場で誰がどこで働いているかを電子データとして記録したかったんです。
そうすると、現場用の出退勤管理システムと社内のシステムと二重登録しなければいけなくなり、それなら一個で済む方がいいよねと、逆にバックオフィス側が現在の利用していたシステムをすてて、新しいシステムに入ってきて、結果的に全社員が使うものとなりました。

ちなみに以前までは工事現場の作業員は紙で記録したものをエクセルに入力して月末に集計するようなことをしていました。
月末になると残業がどのくらいだったかとか、個人別の報告書が出てくるのですが、その時に自分の部下が何時間残業したかが分かるが現場単位での繁忙度の傾向が把握できていない。
Google DataStudio (DataPortal) と連携して可視化しました。
働き方改革をやっていく上で、日々どれくらい残業したかとか、どれくらい遅くまで働いていたとか、リアルタイムでわかるようになり、かつ現場単位で月別の残業時間の見える化ができたことで、上司が繁忙度を見て対策がとれるようになったとのこと。
月末に集計する残業時間とは違い、今の就労状況をリアルタイムに監視できる。
就労状況が原因でもし事故が起きてからでは遅いですし、そうしたリスクを未然に防ぐことにも繋がります。

この見える化で残業チャンピオンを、社長まで見えるようにしたので、気になる現場があると、社長から支店長へ指摘が入り、みんなが注意を払えるようになりました。

次のステップとしては、もっと付加価値をつけたいと思っています。
正しく現状を把握するというステップは達成したので、発注単価の確認とか、コストの検証ができるようになるという方へ進めそうです。

Google Cloud での構築を決めた理由

すでに別のプロジェクトで Google Cloud を持っていたことと、クラウドに置いておけば現場からも接続しやすいのでオンプレよりはいいでしょうし、負荷がかかっても捌けますし、使ってみないとわからないことにも対応できることから Google Cloud で構築することになりました。
あとは、Google Cloud の VM インスタンスはライブマイグレーション機能を備えており、定期的なホストマシンのメンテナンスが不要であることへの期待から Google Cloud を採用しました。

クラウドエースとの開発

実際に使い始めると、現場からの要望が増えてきて、これもやりたいとか機能追加の話や不具合が出てきて、それをうまく対応していただきました。

元々 Google Cloud のサポートをクラウドエースさんから提供してもらっていますが、今回はシステム開発もお願いすることになりました。頼めばやってくれるなと言うのはわかってきて、追加要件が出てきても相談して解決していけました。
例えば、最初は現場だけだったのでタブレットだけでよかったのですが、全社員になってスマホでも使えるようにしたりとか、オリジナルのキャラクターを入れたりとか。
モックアップをパッと作ってくれたのは嬉しかったですね。
動画を動かしてみたいとかもありましたし、やりながら出てきたアイデアをすぐイメージしやすいように物を作ってくれたのは助かりました。

クラウドエースのエンジニアチームの印象

要件定義の部分で富永さんの構想を取り入れて助けられましたね。すごく優秀だと思いました。
PMの倉田さんは大変だったと思いますが、我々の要求に応えながら誠実に最後までやりきっていただいて安心できましたし、大磯さんは「できますよ!」と、クライアントである我々のこだわりに共感していただいて、それを作れるスキルもあったからだと思いますが、すぐモックアップを作ってくれるなど対応が早くて心強かったですね。

希望として面白くしたくてね。少しお願いしたらやってくれて。
キャラクターに朝はおはようございますと言ってくれたり、退勤時は今日も1日お疲れ様でしたとか、癒されるような遊び心を取り入れました。また現場から弁当を頼むと弁当の種類ごとにイラストが表示されるような使っていて楽しいとユーザーの評判も上々です。
こういうところは、開発をお願いするエンジニアさんに共感してもらうことも大事なんだと思います。
個人もそうですが、メンバーの入れ替わりがあってもやってもらえるんだろうと、信頼しています。

利用した Google Cloud サービス

  • Identity Aware ProxyIAPを利用することで、認証と認可についてのコードを一切書くことなく、特定のGSuite組織内へのアクセス制御を非常に簡単に実現できた。
  • Google Kubernetes EngineGKEを利用することで、アプリケーションのスケーラビリティとサービス無停止でのアップデートを実現することができた。
    Extensive Service Proxy や cloudsql-proxy のコンテナも用意されており、GKE における REST APIの 開発が容易だった。
  • Cloud SQLPostgreSQL インスタンスを起動することで、オンプレミスのデータをすぐに移行することができた。
  • Cloud Endpointsデベロッパーポータルのおかげで REST API のテストが非常に簡単に実行でき、API ドキュメントの作成コストが削減された。
    また、エンドポイント毎のレイテンシやエラーレート指標は開発中に大きな助けとなった。
  • Cloud Build開発メンバー全員が GKE や Cloud Endpoints への知見が無くとも、Cloud Build で CI/CD パイプラインを構築することで、Google Cloud や関連 OSS への知見がなくても GitHub へのイベントをトリガーにしてアプリケーションの自動テストと自動デプロイが可能となった。

今後の展望


社長が DX をやると宣言していているので、それに併せて何かやりたいと思っています。
今は社内に色々システムがあって、多少連携しているものの、まだ全部が繋がっていません。いろんなシステムをつなぐよりは、社内のデータ活用でいろいろできたら便利になるかなと考えています。
大きな話としては社内のデータプラットフォームを作って、新しいインサイトを得られるようにしたいですね。
すぐに見える化できると、周りも段々とせっかちになってきて、自分の見たいものがすぐ見えて、それはシステムをまたがっているかもしれないけれど数ヶ月も待ってられないですし、こんなこともできないかと要求が上がってきています。

それも今回の TAMA システムの労務状況の可視化によって、こんなことができるんだと社員に感じてもらえたことがきっかけになりました。
現場は全国にこんなにあるのに、瞬時に見えるというのが意外と、建設業界でもできているところは少ないのではないでしょうか。
今後も、DX や働き方改革といった点で、社内のデータ活用を推進しながら、業界をリードして行けると良いと思っています。


(右から三建設備工業株式会社、大倉様、山中様、早川様、クラウドエースの中野)

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