取材直前

吉積: 一応、今回で第2回目です。

福留さん: アクセンチュアリレーになってるんですか?

吉積: 今ちょっとそうなっちゃってるんだけど、丹下さんとか(株式会社SHIFT)、Media Doの藤田さんとかも知り合いがいて、お願いしようと思ってる。

福留さん: あ〜。よく名前は聞くんですよ、でも接点がなくて、会ったことはない。

吉積: 丹下さんはうちのNo.2の秋田の元先輩で、そこの繋がりで10数年前くらいから知ってる人で。もうすごい勢いで伸びて、びっくりしましたね。

福留さん: 丹下さんは良い経営者ですよね。

吉積: テストだけでそんなに!って思ってたら、、、。うちの G Suite™️ を使ってもらってたんだけど、毎月何十人もユーザー増えてて。

福留さん: マジか。

吉積: まあだけど、大企業との取引が増えて大変とかだと思うんだけどね。

起業のきっかけ

福留さん: 起業は、もともとしようかなと思ってて。大学の頃からビジネスやろうと思ってたので、キッカケってものもないかなぁ。

吉積: 神保さんと出会ったのがキッカケとかではない?

福留さん: 僕は、神保は最高のパートナーだと思ってるんですよ。僕がアクセンチュアに入って最初の上司で、すごいね、いい人だな、と。本当に育ててもらったし。神保さんがアクセンチュア辞める時に、100人くらい集まってfarewell partyをやってて、泣いてる人とかいて。神保さん相当良い人なんだな、みたいな。よし、一緒にやろう!みたいな(笑)

吉積: 他の人が泣いてるのを見て、良い人だなって思ったの?(笑)

福留さん: そう。そんなに慕われてる人なんて、そんなにいないじゃないですか。その前から一緒にやりましょうよ、とは言ってたんだけど、神保さんも転職したりしてたし。でもちょうど彼が独立するっていい出して、2人で京都で立ち上げたんですよ。それが最初で、僕の同期も巻き込んでって感じ。

吉積: もともとこういうことをやろうっていうのは思ってたんですか?

福留さん: 「チェンジ」をやろうっていうのは最初からあって、 Change People, Change Business, Change Japan っていう僕らのミッションって、創業からあって。

最初の日から我々がやるべき仕事はChange Japanだと。で、最初はChange Peopleを一生懸命やりたいなっていうのがあって。産業再生機構の下請けとか、事業再生とかもやっていたんだけど、再生の問題って結局「人」の問題に尽きるじゃないですか。なので、その人の所にアプローチしたいなと思って、で教育事業立ち上げて。そんな流れですね。

吉積: 神保さんと、そこは一致したんですか?

福留さん: いや、神保さんはそんなにやりたいタイプでもなくて。僕がやりたいことを、親切に見守る。そんな感じ。僕のよき兄貴、みたいな。

しっかりした長男、暴れん坊の次男みたいなさ。そんなイメージですよ。

吉積: そっか。うちは長男がいなくて、僕が暴れん坊の長男みたいな(笑)

一番苦労したこと

吉積: 苦労したことってそんなにない感じですか?

福留さん: いやいやいや(笑) 苦労だらけですよ。

吉積: 仕事はそれなりに入ってきて、コンサルタントとして、結構な人がきたらそんなに困らないんじゃないですか?

福留さん: 立ち上げはそんなに困らなかったですね。最初の人材系の事業立ち上げもうまく綺麗にスタートが切れた感じですね。

それよりも、どちらかというと迷走していた時期に、インドで居酒屋やったりクレープ屋やったりとか。僕の中で次は、Change Businessだと思っていたから、その中で日本の企業をグローバル化させたい、特に製造業とかはグローバル化してるけど、第3次産業とかってドメスティックじゃないですか。なので外食とか含めて、日本のいろんなサービス業を海外に出して行こうと思って、これをやろうって決めて。東南アジアとかインドとかに決めて、いろんなビジネスを出すっていう。特に僕がビジネスで強かったのはインドなんですけど。

吉積: なんでインド?

福留さん: ずっとやってたから。2007年とか8年からやってましたからね、インドは。僕が先頭を切って。

吉積: じゃあすごいインド行ってたんだ?

福留さん: 月の半分くらいは行ってたかな。めちゃくちゃすりましたけどね。お金はなくなりました(笑)

吉積: なるほど、、、社長が半分時間費やして、お金も無くして帰ってきたみたいな(笑)それは今は終了してる?

福留さん: 全面撤退だね。昔はインドの現地法人もありました。インドに人を置いてたり、ピークの時は日本オフィスも、日本人よりもインド人の方が多くて。8年前はオフィスがカレーの匂いがするくらい。インドから連れてきて、日本でシステム開発をしていて、アメリカで流行ってるサービス、当時はグルーポンかな、みたいなものの日本版みたいなのをガシャガシャ作って、いち早くアメリカのITサービスを日本で開発するってビジネス。

でも震災でみんな帰っちゃいました。それもまあまあの苦労でしたね。プロジェクトがいきなり頓挫するわけですからね。マジかよ、みたいな。

吉積: オフショアでやってもらえなかった?

福留さん: オフショアである程度はやってもらったけど、まあそんな簡単にできるわけないじゃないですか。なんで、なかなかうまくはいかないというか。なんとかプロジェクトはクローズしましたけど。

吉積: 今までのビジネスで一番苦労したってのはなんです?

福留さん: うーん、今までのビジネスで苦労は、、、なんだろう、リスク感覚というか、苦労とか大変とかあまり感じないタイプで。鈍感なんですよね、とにかく。普通の人が「うぇっ」ってなってる時に燃えるタイプなので。苦労したってかんじはあんまりないですね。

吉積: じゃあ、一番燃えたのは?

福留さん: 一番燃えたのは、リーマンショックの後とか。

インドに行き始めて、人材ビジネスが一番最初に立ち上がったので、すごいキャッシュが回ってたんですよ。その稼いだキャッシュを全部インドに投資してたので。日本が稼ぐことが前提のモデルのわけですよ。で、リーマンショックがあったときに、日本が稼げなくなった。

そこで逆回転を始めたので、まさか自分が自分の事業を立て直すことになるとは思わなかった。リーマンショックの後、今まで稼いでいたビジネスがいきなりぱたっと止んで、どんだけアクション打っても、売り上げも利益も増えない状況がちょっとあって。

つまり、ほとんどの法人が、全ての投資の意思決定をやめてるんですよね、その時って。そういう時期があって、あの時は迷走含めて、なかなか色んなことやりましたね。BtoC まで手出そうかなっていう勢いでしたからね。あそこの再建はまあまあ苦労しましたけど、あの時に色んなタネを撒いて、やっぱりITやるかみたいな。インド人のエンジニア部隊で、日本で、海外のサービスを日本に持ち込んで、開発をするってモデルで一旦乗り切ったんですけどね。

吉積: それまではIT要素は入れてなかったの?

福留さん: 入れてなかったです。入れ始めたのは2009年とか2010年くらいからですよ。それくらいからは、インド人のITエンジニアをわーっと入れて、ITコンサルタントとセットで動かすみたいなのをやり始めて、一旦2011年3月にそれがリセットされて。だから2年くらい持ちましたね、そのビジネスモデルで。結構ちゃんと儲かるビジネスにできたんですけど、あっという間にまた大変なことになって、、、。また立て直して。

吉積: ピボットしまくってるんですね(笑)

福留さん: いや、もうピボットしかしてないですね、うちの会社(笑)よくアクセンチュアの人たちから、チェンジって人材の会社でしょ?って言われるんですよ。でも人材は3割くらいで、今だに大事に育ててますけど、今は完全ITですね。っていうと「え、そうなの?」「ITわかるやついるの?」みたいな話で。いや勉強したらわかるに決まってるじゃないですかみたいな(笑)

吉積: そっか、チェンジしまくってるんですね。

福留さん: そうそう、Change ourselves!

上場を決意した瞬間 – 軸は「出来る」と「儲かる」

吉積: そこから上場を決意した瞬間っていうのは?

福留さん: 上場を決意した瞬間は、僕は好きなことやってたので、日本で人材ビジネス立ち上がって利益が出るようになったらそれをインドに投資して、失敗して、、、。

ある意味での集大成が2011年11月の大震災で、インド人がみんな帰り。で、そこから2013年の年末くらいまで、インド系事業の清算とかをやって。

その間の2012年の12月に、衆議院選挙に出てるんですよ。当時民主党政権でめちゃくちゃ政治が気に食わなくて。まあ落選したんですけど。その後、2013年に政治家になるかどうか1年考えて、でも真面目にビジネスで「Change Japan」をやろうって決めて。社員にも、これまで好き勝手やってきたけど、これからは真面目にやりまっせ、と。2013年の年末とかに役員とか社員とかにも謝って。

ここでスイッチ入れて真面目に商売やるぞって決めて、14年の頭に全員でKick Offやった時に、上場しますと宣言して、2014年1月から準備を始めて2016年の9月に上場したと。

吉積: へぇ〜。それまで真面目にやってなかった?(笑)

福留さん: うーん、真面目は真面目なんだけど、商売って好きなことと、出来ることと、儲かることの真ん中にないといけないじゃないですか。好きで、出来て、儲かるってとこの真ん中が必要なんですけど、好きなことをやってたんですよ。出来るっていうのは、まあまあ器用なので、できるようにはなるんですけど、儲からないとか。

好きだからこそ、やりたいんだけど、そもそも出来るようにならないとか、こういうところがあって。「好き」を軸にしてたんですよね。でも「好き」じゃないなと思った。軸は、「出来る」ことと「儲かる」ことだと。これをひたすら繰り返しているうちに、好きになるという風に、そっちのアプローチで。

要は、自分の好きなことだけ追求しててたら、判断が鈍るんですよ。合理的な判断をやめて、都合のいいように解釈するんですよね。思い入れが強いものって、「そんなわけはない」「絶対こうだ」みたいな。

経営ってアートとサイエンスだと思うんです。好きを軸にするときの危なさって、エネルギーはすごい出るし、突っ走れるんですけど、好きであるがゆえに「サイエンス」が疎かになるんですよ。

本来めちゃくちゃロジカルに考えられるのに、好きであるが故に勝手な論理を作るというか、話に仕立てあげるみたいなのがあって。これって厄介なんですよ。論理構築とかも、ほんとじゃないのに、めちゃくちゃ色々やるわけですよ。

例えばインドで居酒屋をやるって、どう考えてもおかしいじゃないですか?(笑)合理的判断じゃないですよね。でも、好きだからやりたいわけですよ。日本の外食は、何兆円あって何社あって、インドには何人いて、インド料理以外のものはこんなになくて、こっから先これだけ伸びて。インドの外食はこれだけ伸びる、と。で、日本料理、、、ない!みたいな。

日本料理が何十億のマーケットを作ったら、我々これを丸ごととるぞ!と。まずは日本初のチェーン店を作ろうというビジネスプランが出てくるわけですよ。そんなの嘘に決まってるわけじゃないですか!(笑)

吉積: まあ、できないことは、なさそうな気はしますけどね、、、。

福留さん: まあ、基本は嘘なんですよ。好きなだけで、出来もしないし、儲かりもしないことを、やりたいから書いてるだけなんですよね。

ITとか、BtoBのビジネスとかが我々は得意だから、この「出来ること」を出発点にして、かつ、今のマーケットにフィットした「儲かること」をサービスに仕立て上げてやっていこうと腹を括り直し、2014年からひたすらそれをやってるっていう感じです。

吉積: 14年の頭にそれを決めて、ちゃんとそれをやる=上場だったのはなんで?

福留さん: やっぱり、上場することの一番のメリットって、株主に評価されるんですよ。未上場とかオーナー企業って、誰からも文句言われないわけですよ、言ってみれば。

マーケットが監視してくれる

吉積: お兄ちゃん(神保さん)は文句言わないんですか?

福留さん: お兄ちゃんはね、文句言わないですよ(笑)お前が好きなようにやれ、と。いう感じなので。僕はやりたいようにやるわけですよ。ある意味、ガバナンスがきいてないわけですよね。僕が好きなように、好きなことをやって、稼ぐ仕組みを作ったのも俺なら、使うのも投資するのも俺でしょ、くらいの勢いで、ガツガツやるわけですよビジネスを。そうすると、まあ失敗するわけですよね。痛い目にあうわけです。

そういうことを、もうちょっと統制効いた形で、他人の評価に晒されながら、ちゃんとがんばる、ということを考えた時に、上場って一番いいですよ。ちゃんとやらないと株主に文句言われますからね。僕はそれを前向きに捉えていて、株主とすごく仲がいいんです。

「うちの息子が早稲田受かりました!」「マジで!おめでとうございます!」とか、メールのやりとりとかしたり。会社の中身の情報はフォーマルな場でしかしないけど、プライベートの話とかもしますよ。Facebookで申請きますからね(笑)

吉積: 僕、株主なんです、って?

福留さん: だいたいわかるんですよ。僕、会社にIRの問い合わせメールがきたら、自分で返信してるので。あれこの人の名前見たことあるな、って思ってメール検索すると、あーやっぱり、この人うちの株主だ、ってなる。普通承認しないじゃないですか。会ったことないし。でも僕は承認するんです。株主と仲良いと、顔が見えるから。

息子さん早稲田に出しました、大学1年生の息子がいます、とか。うちの会社の株暴落させるわけいかないですよ、この人の学費とか色々考えると。稼がないといけないですよ、もう。真面目に経営して、株主に喜んでもらえるように株価上げるしかないです。

それが僕のことだけだったら、別になんてことないし、上場しなくても給料だけもらって、楽しく誰からも叱られずでいい。インドはダメだったけど、次アルゼンチンかなーみたいな感じで、勢い余って行くわけですよ。

楽しいことをやってるといいんですけど、僕みたいな人間は、楽しいこととか好きなことよりも、自分が得意なこととか、やるべきこと、儲かることにフォーカスした方がちょうどいいんですよね。それをバシッと固めてくれるのが上場なんですよ。

未上場だったら、去年5億円儲かりました、そして3億5千万キャッシュが残りました、、、なら絶対投資しますからね。全部!しかも、何に投資するかって、その時に僕がやりたいことなんですよ。

ちょっと地方で古民家でも買おっかな、みたいな。インバウンドのホテル事業とかやってみたいんだよね、みたいなことをやると思うんですよ、ほっといたら。

でも、今はそういうことやりたいって頭の片隅で思ったとしても、それは俺の商売じゃないな、と。そこにブレーキをかけてくれたり、僕の暴走を止めて、ちゃんと儲かる、得意なことをやらせてくれるのが上場なんですよ。

吉積: なるほどね〜。すごいわかりますね。

福留さん: 吉積さんもそういう性格じゃないですか。そういう人はね、上場した方がいいですよ。マーケットが監視してくれますからね。

吉積: それをあえて自分に課したんですね。

福留さん: そうですね。

上場して良かったこと

吉積: 今僕がやっている Google Cloud™️ ビジネスは、やりたいこと、出来ること、儲かることが多分合致していて。No.1でい続けるためには出資してもらわないとならないっていうところで、色々やりたいけど、勝つために、なにかを諦めるってイメージで上場をしようと。僕は上場したくてした派ではないので、それをあえてとりにいくっていう、そういう視点は想像してなかったので、面白いなと思いました。

福留さん: まあ、個人的な話ですけどね。会社としていうと、やっぱり信用力とか、採用のときにプラスとか、いくらでもありますからね。

吉積: たしかにいくらでもあるんだけど、福留さんの思ったタイミングなんでしょうね。会社としては、あらゆる会社は上場すればメリットはあるんだし。

福留さん: まあね。僕にとっての上場はこういうものなんです。

吉積: みなさん違いますね。まだ対談3人目ですけど。

福留さん: 多分全然違う切り口で考えてると思いますよ。まあ副次的には資金調達の口を増やすとか、信用力とかあげて一気に会社成長させるとか色々ありますけど、僕の場合は「ちゃんとする」っていうね (笑)

吉積: すごい、自分にちゃんと殻を被せるんだ (笑)そっちの方が、みんなハッピーになってことですよね。

福留さん: そうなんですよ、周りの人間がね。ハッピーになる。

吉積: ちょっと振り回しすぎたな反省がある?

福留さん: そうそう、ありますよやっぱり。嫌じゃないですか、やっぱり自分の会社の社長が選挙出たりしたら (笑)僕はそれを押し切って、お前らはお前らの人生だからがんばれ、俺も頑張る、みたいな雰囲気だったんですよね。だからあんまり気にしてなかったんですけど、やっぱね、僕の大事な社員がすごい不安がってて。そうなんだ、会社って家族みたいなもんだとか言ってたもんな、と。そりゃ父ちゃん蒸発したら、息子、娘は心配だよなと思って。

息子、娘の目から見ると僕は耳に赤ペンいれて、競馬新聞持って、母ちゃんからお金奪って競馬場に向かう親父に見えるんだなっていうのがわかるんですよ。だから反省して、よし、サラリーマン勤めでもしようかなってノリで上場するっていう。

吉積: それは、何人か社員が辞めて気づいたとか?

福留さん: 人はめっちゃ辞めていきましたよ。全然気にしてなかったですけどね。上場する前の審査に入る前に、いや、これ辞めすぎじゃないですか?って。全然止めてなかったですもん。離職率25%で。腹くくって真面目にやりはじめてからは2%とかに減りましたからね。経営者の意志ですよ、会社なんて。

吉積: 気にしてなかったから、辞めたきゃ辞めれば?みたいな?

福留さん: そうそう。ケアもしないし。いいじゃん辞めれば、どんどん活躍してくれ!って。

吉積: すごい(笑)じゃあ採用もすごいしてたってことなんですよね?

福留さん: そうですね、、、でもそこまで入れてなかったですね。すごく従業員少なかったんですよ、インド人が居なくなってから。インド人が居た時は60人くらい、で、30人居なくなって、そこから40人になり、10人辞めて30人になってとかがずっと続いて。上場した時も60人くらいで、今は100人くらいになりましたけど。

吉積: でもオフィス変わってないですよね。増床した?

福留さん: そう。今、神谷町に3つ拠点があるんですよ。

こういうケースだと上場は考えなかった
吉積: 逆にこういうケースだと上場を考えなかった、とかは?

福留さん: うーん、、、この会社、俺以外の奴が社長やった方がいいな、って思ってたら多分2013,14年時点で多分辞めてましたね。

吉積: おー、そうゆうオプションもありうるのか。もう父ちゃん違う人の方がいい、と(笑)

福留さん: 父ちゃんやっぱり旅に出るわ、もともと多動症だから、真面目にサラリーマン無理なんだよね、って(笑)それだったら、上場ってオプションはなかったですね。上場して真面目にするって決めたので、僕じゃない人が会社やってもこの会社発展するし、安定するなって思ってたら、やってなかったと思いますけどね。

吉積: 逆にいうと、その時任せられる人は居なかったってことですね。

福留さん: そうですね。今でもいないです。この会社は、今の所は僕がやるのが一番いいと思っていて。あまり長くなりすぎるといけないですけどね。やっぱりどこの会社も、サラリーマン社長はよくないですよ。僕が尊敬するのは、株持ってないのに、大胆な決断ができる人。

吉積: その他の人にちゃんと説明もできて、大胆な決断もできる、と。

福留さん: オーナーっぽい、これが結構重要だと思っていて。日本のサラリーマン社長ってリスク取らない。決断しないんですよ。これがよくないな、と思っていて。僕らが腹くくってちゃんとリスクをとって、明確に組織を動かしていくってことをやらないとなと。どれだけの株を持ってるかとかは全然興味ないですよ。でもこの会社を経営した時に一番ピカピカになる、っていうのに、一番やりがいを感じるので。

いま改めて一番感謝すること

吉積: 今感謝することってありますか?

福留さん: やっぱり感謝してるのは、創業したときから一緒にやってる神保もそうだし、役員とかも本当にそうで。経営会議とかではシバき倒してるんですけど(笑)、本当に感謝してて。僕みたいなキャラの濃い奴と長年一緒にやってくれてるなんて、なかなかないですよ。

アクセンチュア出身の人でもよくあるパターンで、一緒に起業したはいいけど、方向性が変わって、みんな割れるじゃないですか。それもなく、かれこれ16年くらいずっと一緒にやってきてくれてるっていうのは、僕のおかげは0%で、100%周りの人のおかげ。あいつと一緒にやろうってちゃんと思ってくれてるから続いてる訳で。

よく言われるんですよ、Changeって創業メンバーでいまだに仲良くやってるよねって。1人も辞めずに。本当にそれが強みだなって思うんですよね。話も早いし、気心知れてるから、言いたいこと言っても、そうそう信頼関係崩れないんですよ。まあ相手はどう思っているか分からないですけど(笑)

これはすごく感謝してて。僕が相手の立場だったらキレるだろうなっていうことも言ってますし。経営陣がちゃんと付いてきてくれていることには、大感謝ですね。

あとはChangeのお客さんと株主。会社が伸びるかどうかって、お客さん次第だなと思ってて。お客さんてお金をもらう相手でもあり、我々が価値を提供する相手でもあるんですけど、やっぱり綺麗事抜きで、一緒にデジタルの力で仕事の仕方とかビジネスを変える、新しいことに挑戦する仲間というか。お客さんのおかげでうちの会社の人間は育つし、逆にお客さんも我々と一緒にプロジェクトをして、育つみたいなところがあって。これってすごくいい関係だなと思うんですよね。我々を育ててくれているお客さんにはすごく感謝します。

株主は、IPOしてからずっと我々の成長とか、ビジネスパフォーマンスにすごく期待してくれてるのはありがたい。要は、確定してない利益を見込んでくれてる訳じゃないですか。うちの会社PER100倍なわけですよ。向こう100年分の利益を見込んでくれてるっていうのは、凄まじいスピードで成長するでしょって思ってくれてる訳ですよ。そしたら期待に答えざるを得ないというか、もう我々最速で成長しますよ、と。あっという間に、日本を代表するような会社になります、と株主にコミットしなきゃならないじゃないですか。そこはこう、お互いにギブアンドテイクだなと思って、株主にはとても感謝しています。

吉積: 上場するまでの間はトラブルとかはなかった?

福留さん: 何もなかったですね。そこはすごい集中力で乗り切りましたね。

吉積: 今まで対談した3人とも、上場すると決めてからは一気に登っただけ、以上!だったな。

福留さん: 決めた時には別に事業の裏付けとかはなかったですよね。ただ、そこで決めた事業計画通りに全て進捗させたので。

吉積: すご!

福留さん: そこはでも、お客さんのおかげですよね、まさに。あとは担当役員もよく頑張ったなと思います。

吉積: 裏付けないのに計画通りに?

福留さん: そう。これこれをこれだけ増やす、みたいな。でも未来のことなんて全部空想じゃないですか。その空想を深く考えたら全部アクションに落ちるし。数字いかない人ってすごいシンプルで、考えてないんですよ。

この数字って今このくらいギャップがあって、このギャップってどうやったら埋まるんだっけ?っていうのを、頭かち割れるくらい考え抜いたら、オプションの10個や20個でると思うんですよね。選択肢が出てきたら人間楽だと思うんですよね。もしかしたらこっちやればいいかな、とか。あとは決めて動いて、うまく行かなかったら次に行くみたいなのをひたすら繰り返して。

要するに思考停止をやめる。深く考えて、決めて動くっていうのをひたすら繰り返して。数字がいかないっていうのは、いい加減に考えてるんですよ。あの案件で、お客さんがYESって言ってくれたら受注して、みたいな単線なシナリオだけで。それ受注できなかったらどうすんの?って言ったら、「うーん、そこが受注できなかったっていうのはあんまり考えてないです」みたいな。だからお前数字いかないんだよ!と。

ダメだったらどうするか、2つ3つくらいバックアッププランがないとって話。僕はそこらへんを厳しくマネージメントしてたっていうのはあると思いますけどね。

吉積: すごいな、アクセンチュア出身者。僕もそうだけど(笑)

福留さん: アクセンチュア出身者いいですよね。唯一できないなと思うのが、意思決定ですね。考える力はあるんですけど、物を決める力が足りない。どっちに転ぶか分からないことを悩んでアイドリングしていることが多い、っていうのが僕のアクセンチュア人材の見立てですね。

頭いい人って、困ったことにどっちに触れるか分からないことがずっと考えているんですよ。考えるほど時間ロスなわけで、その間に頭が悪くて行動力のあるやつがバンバンきちゃう。

吉積: 両方とにかくやっちゃうんだよね。

福留さん: それが、どうして頭のいい人が成功しないかの理由だと思いますね。僕はうちの役員のなかで一番頭悪いと思ってますけど、一番仕事はできると思ってるんですよ。なんでかっていうと、物をちゃっちゃと決めるから。

吉積: それは大事ですね。コンサルにはなかなかいないね。

福留さん: コンサルは頭がいいので、分析もできるし。「これは右に倒れるのか、左に倒れるのか。左に倒れる確率はこれで、なぜ左に倒れるのか、左に倒れたインパクトは、、、」とかは話せるわけですよ。でも左に倒したいの?右に倒したいの?どっちなの?って話をすると、「それはあなた次第です」みたいな(笑)どうしてもそういう話になるじゃないですか、仕事のDNAとして。

意思決定はお客さんがするっていうスタンスなので。あれが三つ子の魂百までで、物事を決める習慣が付いてないんですよ。どちらかというと、営業やってきた人とかは、物を決めないとならない局面が多いから、相手にも決めさせないといけなから、ロジカルに考えるのは苦手でも、決めてガンガン動かすのが得意だったりするので。どっちが戦闘力高いですかって言われると、実は動く方が高かったりするんですよね。

吉積: そうだね。勉強になりますわ。

編集後記

インドでの事業や選挙出馬など、波乱万丈なビジネス経験をお持ちの福留さん。

創業からのミッションが「Change」であったと語る彼の行動力は、聞いているこちらまでもワクワクさせてくれました。

「出来ること」、「儲かること」から「好きなこと」を生み出すというスタイルは、これから起業を目指している人にとって、とても参考になるのではないでしょうか。

編集・撮影:杉山(クラウドエース株式会社 事業企画部)

編集:織田(クラウドエース株式会社 事業企画部)